暗号資産に55%課税は「重すぎる」──JBAが分離課税など5項目要望、税制の「ねじれ」懸念も | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

暗号資産に55%課税は「重すぎる」──JBAが分離課税など5項目要望、税制の「ねじれ」懸念も

日本ブロックチェーン協会(JBA)は7月18日、2026年度の「暗号資産に関する税制改正要望」を金融庁に提出し、都内で記者会見を開いた。登壇したのは、JBA代表理事で暗号資産(仮想通貨)取引所ビットフライヤーの代表取締役CEOを務める加納裕三氏と、JBA税制分科会分科会長でDeFi(分散型金融)やNFT領域のプラットフォーム開発などを手がけるNewLO取締役CFOも務める岩﨑宏太氏。

要望の柱は、暗号資産の売却益に対する「分離課税」の導入や相続時の制度見直しなど。加納氏は、最大で55%の税率が課される現行の総合課税はWeb3時代にふさわしくないとし、株式と同じ20.315%の課税となる税制改正の必要性を強調した。

懸念される税制の「ねじれ」

今回の要望に至った背景として加納氏は、国内市場の拡大と諸外国と比べて「著しく重い税負担」を挙げた。

米国ではビットコイン(BTC)現物ETFの運用残高が1400億ドルを超え、資産形成手段としての地位が確立しつつあると指摘。日本でも口座数が1200万を超え、投資経験者の7.3%が暗号資産を保有しているとし、「一般投資家の資産形成の手段として暗号資産の位置づけが変わりつつある」と説明した。

〈JBAが金融庁に提出した5つの要望事項〉また懸念として強調したのが、金融商品取引法(金商法)の下で暗号資産を「金融商品」として位置づける議論が進むなか、現物取引とETF取引で課税方式が異なる「ねじれ」が生じる可能性があるという点だ。

米国ではすでに承認されている暗号資産の現物ETF(上場投資信託)が日本でも認可されれば、現物取引による利益には最大55%の総合課税が適用される一方で、ETF取引には約20%の分離課税が適用される可能性があると指摘。取引方法によって税率が異なれば資金はETFに流れ、現物取引の流動性低下につながり、結果として国内のWeb3産業の成長を阻害しかねないと警鐘を鳴らした。

実際、ETF未承認下の日本では投資家がビットコインを直接買う代わりに、財務戦略としてBTC保有を進める企業株に投資する動きもあり、株式には申告分離課税が適用されるという税制上の優位性を物語っている。

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加納氏は「企業の個別戦略にはコメントできない」と前置きしつつ、一般論として、ビットコインを多く保有し、他の事業をほとんど行っていない企業の株価は、ビットコイン価格に連動しやすいと指摘。現在、そうした企業の株価はビットコイン価格以上に上昇しており、「過熱している状態だ」と述べた。

そして、その背景にはまさに「税制の問題がある」とし、投資家はBTCの値上がり益をより効率的に受ける手段として「ビットコインを詰め込んだような会社」の株を購入し、間接的にビットコインに投資しているのだろうと分析。こうした熱狂ぶりを踏まえれば、日本で現物ETFが導入されれば「それなりに需要が見込まれる」と述べた。

加納氏は、投資家が税制の差を意識して投資先を選ぶ現状を踏まえ、暗号資産への分離課税の導入やETFの承認が、健全な投資市場の形成につながるとの見方を示した。

「過去一番の熱量」で進む議論

岩﨑氏は、JBAが要望した5項目を巡る今後の議論では、分離課税の対象銘柄、取引場所、源泉分離の3つが論点になると指摘。

〈岩﨑氏は、今後の議論の論点についても語った〉まず対象銘柄については、JBAはすべての暗号資産を分離課税の対象とすべきと要望しているが、与党の税制改正大綱では「一定の暗号資産」と記載されており、銘柄範囲の設定が今後の大きな論点になると見通した。

取引場所に関しては、仮に分離課税が導入されても、どこで売買した暗号資産が対象になるのかを明確にする必要があると指摘。JBAでは自身で管理するウォレットの暗号資産を国内の登録取引所で売却した場合には分離課税を適用するよう求める一方、無登録の取引所での取引には「分離課税の対象外」とすることが望ましいとしていると述べた。

最後の源泉徴収制度については、暗号資産取引の税務処理が複雑であることからユーザーが「源泉徴収の有無」を選択できる制度の導入を要望しているとした。確定申告などの煩雑さが暗号資産取引へのハードルになっていると述べ、納税の利便性を高める仕組みづくりが不可欠だと訴えた。

加納氏は、こうした要望や過去の議論を振り返りつつ、「今年は政府、行政ともに過去一番の熱量を持って議論が進んでいる印象」と述べ、金商法への移行や税制改革の進展に期待感を示した。

金商法への移行については、すでに金融審議会総会での議論が始まっており、年内にも報告書が取りまとめられる見通し。来年の通常国会での法改正案提出が視野に入るため、年末にかけて注目が集まる。

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なお、今回JBAが提出した要望事項の内容は以下のとおり。

1. 分離課税・損失繰越控除の導入

個人が暗号資産の売却益を得た場合、最大55%の総合課税が適用され、株式などと比べて不利な扱いとなっている。JBAは暗号資産の売却益についても一律20.315% の分離課税とすることを求める。さらに、取引で損失が出た場合は、3年間の繰越控除(利益と相殺)を可能とすることを求める。加えて、特定の口座内で取引が完結する場合には、「源泉徴収あり/なし」を選択できるようにすることを求める。

2. 相続時の取扱いの見直し

暗号資産を相続した場合、現行制度では相続時点の価格をもとに相続税が課される一方、相続人が売却する際の取得価格は被相続人の購入時価格が適用されるため、実際には利益が出ていないのに所得税が発生するケースがある。JBAは上場株式と同様に取得費加算の特例 (支払った相続税の一部を取得費として加える)や価格評価方法の柔軟化 (相続日の過去3か月の平均価格のうち、最も低い価格によって評価) を求める。

3. 暗号資産同士の交換時の課税を繰り延べ

現行制度では暗号資産同士を交換した場合でも、その時点で「譲渡益があった」とみなされ課税される。これは暗号資産同士で活発に交換が行われる取引慣行と乖離しており、納税計算が極めて煩雑である。JBAは、暗号資産の交換時点ではなく、法定通貨に変えた時点で課税することを求める。

4. 暗号資産を寄附した際の非課税措置の適用

暗号資産による寄附は災害支援や国際的な慈善活動などで活用が進んでいるが、日本では寄附時にみなし譲渡課税(寄附時の時価と取得価格の差額に課税)が発生し、寄附を促す上で大きな阻害要因となっている。JBAは、上場株式や不動産などと同様に非課税とする特例 (租税特別措置法40条) を暗号資産にも適用するよう求める。

5. 法人による暗号資産保有への期末時価課税見直しの継続検討

2024年の法人税法改正により、企業が保有する第三者発行の暗号資産について、一定の条件を満たせば期末時点での時価評価による課税を回避できる仕組みが導入された。活用が進む一方で、対象となる銘柄は国内の暗号資産交換業者が取り扱っているものに限られる点や、技術的な譲渡制限を確認する必要があるなど、利用のさらなる拡大には課題がある。JBAは保有する法人、暗号資産交換業者、自主規制団体であるJVCEAなどにとって利便性の高い仕組みとなるよう見直しの継続的な検討を求める。

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